サイト構造にひと工夫
■簡単な原則
■ページデザインにひと工夫
■スクロールは嫌われる?
■スクロールを逆手にとってひと工夫
■煩雑なアクセス手順を見直す
■「二重トップ」ってどうなの?
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■簡単な原則
 デザインするうえで勘案すべき原則があります。それは、

 「ユーザーは手間を厭う」

です。この「手間」とは、具体的に上げると、次の三点になります。

 1.ウェブページのダウンロード
 2.スクロール
 3.煩雑なアクセス手順

 (1)の「ウェブページのダウンロード」は接続環境にもよりますが、ダウンロードにかかる時間(=ページが表示されるまでにかかる時間)によって生じるストレスのことです。特に「クリッカブルマップ」を採用していたり、コンテンツを画像で表示している場合は、表示までに時間がかかりますから、大きなストレスを与えます。

 (2)の「スクロール」は縦に長いページの場合に生じるストレスを指します。このストレスが生じるにはいくつかの条件がありますが、例えば、トップページを開いたさい、ユーザーにとってどうでもよい情報(雑記や但し書きなど)が延々と続き、必要な情報(ユーザーが求めている情報。コンテンツ一覧など)が最下部に配置されている場合、ユーザーはページをスクロールさせながら、表示されている文書に一通り目を通し、最後にようやくその情報に到達します。これは新規ユーザーにもストレスを与えますし、リピータにもストレスを与えます(単なる但し書きのために、いちいちスクロールさせなければいけないからです!)。

 (3)は(1)とも密接に関わりますが、あるページに到達するまでに生じるストレスのことです。例えば、「page0x」に至るまでに、 top - page01 - page02 - page03 - page0x と次々にページを開く必要があったとします。それぞれのページで(1)のストレスが生じますから、page0xに到達する頃には、合計されて相当なストレスになります。アクセスまでに必要な手順が煩雑であればあるほど、当然ストレスは大きくなります。

 ここではユーザーがこうした手間を厭う、という点を第一に勘案し、「小説を読まれやすい」サイト構造を考えてみたいと思います。

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■ページデザインにひと工夫
 ダウンロードによるストレスを軽減するためにまず考えがちな対策が、「ファイルサイズを軽くする」という実に単純なアイディアです。しかし実際はあまり効果的ではありません。

 なぜなら、ブラウザはすべてのデータを読み込んでから表示するわけではないからです。ブラウザは先に読み込んだ情報から順次表示していきます。ファイルサイズが大きくとも、必要な情報がまず提示されれば、ストレスはさほど与えません。

 ですから、ここで重要なのは「情報を表示させる順番」になります。

 例えば、画像を表示させるさい、大サイズの画像をページの最上端に掲げると、その画像が鮮明に表示されるまでユーザーは何もできません。デザイナ側は「ユーザーは画像が表示されるのを待つ必要はなく、すぐさまページ下端のテキストを見ればよい」と考えがちですが、それではスクロールに伴うストレスが生じますし、スクロールさせればよい、という点に気付かないユーザーは多数存在するようです。

 そこで気を付けるべき点は、

  1. 必要な情報を上部に配置する(=不必要な情報、需要のない情報を上部に配置しない)。
  2. 画像は表示されなくても問題のないよう(不便にならないよう)デザインする。
  3. テーブル(table)はすべてのデータが読み込まれてから表示されるので、小分けにするか(※)、優先して表示させたい情報はテーブル内に収めない。
    ※<cellspacing="0">に設定すれば、テーブルが途切れることなく連結して表示されます。

 といった点になります。

「自分のデザインしたページがどのような順番で表示されるのか」「先に表示される情報は読者の需要が高い内容か」といった点を自己確認すると良いと思います。またこの表示順を利用して、アピールしたい情報をまず提示するということもできます。例えば、上で否定的に扱った雑記や但し書きでも、それをコンテンツや新着情報といった有益な情報より優先的にユーザーに読んでもらいたいなら、堂々とページ最上部に掲げるべきです。

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■スクロールは嫌われる?
 スクロールは嫌われる、という実感がデザイナ側にはあるようです。しかし実際のところは、さほど嫌われていない、というのが実状のようです。ただしいくつかの条件が重なると、スクロールがストレスを与えます。
  1. 無益な情報を読み飛ばすためにスクロールさせなければならない。
  2. デザインにメリハリがなく、情報の質的差異が一見しただけでは掴めない。
  3. 最も必要とする情報やリンクがページの最下端にある。

 (1)は雑記や日記、但し書き、注意事項などがページ上部に延々と続く場合です。例えば、僕の日記(ワリミス)のアクセス数はサイトのアクセス数の約七分の一程度です。これは「僕の日記が詰まらないから」という可能性を否めないものの、雑記などの需要が低いことを物語っていると思います。まして近況報告などの需要はなおさら低いと予想されます。

 また但し書き・注意書きの類は嫌われる、と考えた方が良さそうです。良心的な注意書き、例えば、「このサイトの小説には露骨な性描写が含まれますから、18歳未満の方はご遠慮下さい」とか「グロテスクな描写が目白押しですから、心臓に自信がある方だけお読み下さい」とかは、ユーザーへの配慮として必要だと思います。しかし「このサイトはオリジナルミステリを発表しています。かなりの自信作ばかりで、市販小説に負けぬ出来だと自負しておりますが、いかんせんまだサイトを立ち上げたばかり。まだまだ閑古鳥なサイトです。低レベルなオンライン小説に裏切られ続けている方、独創性も何もない市販小説に飽き飽きしている方、おすすめです! どうぞ……」などと、いきなり思いの丈をページの冒頭でぶつけている方がいますが、これはユーザーにとってはどうでもよい情報ですから不必要です(それに「市販小説に負けぬ出来」かどうかは読者が判断することであって作者が判断する点ではありません。「オリジナルミステリがあります」程度で充分です)。また但し書きの類は言い訳になっていることが多く、「言い訳するくらいなら堂々と公表するな」と思われてしまいますので、不必要な情報になることが多いようです。

 (2)はトップページによく見られるもので、リンク表記に工夫がなく、それぞれのリンクに但し書きが付いている場合に生じます。例えば、小説の題名をそのままリンク表記として使っている方がいますが、ちょっとした工夫をしないと、いったいリンク先に何があるのか予想できません。ですから、そうしたリンクが散りばめられていると、ユーザーは行き先を求めて右往左往し、スクロールを繰り返すことになります。また但し書きがいちいち付されていると、文書の中にリンクが埋没してしまいますから、リンク先と認識することが難しくなります。そもそも「スクロールが必要=検索範囲が広い」になりますから、検索を妨げる要素(=わかりにくさ)は相当なストレスに直結します。
 ※リンク表記に関しては「理想のリンク表記」も見てみて下さい。ただし、そこで提唱されている「リンク先の説明文そのものがリンク」はひと工夫しないとストレスの原因になります。

 (3)はリピータが覚えるストレスです。注意書きなどは一度見れば良いわけですから、再訪のたびにいちいちスクロールさせて、こうした情報を飛ばす必要があります。これは「リニア型リンク方式」(「リンク方式にひと工夫」参照)の小説ページで、次ページへのリンクが最下端にある場合にも生じる可能性があります。話の途中から再読するさい、いちいちページを開いて最下端までスクロールして次ページへ移動、また最下端までスクロールして……と繰り返さなければならないからです。

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■スクロールを逆手にとってひと工夫
 上に挙げたような不具合がスクロールにはあると考えられます。ですが、かといってスクロールは徹底的に避けるべき要素ではありません。

 スクロールを忌避してページ数を増やす方がしばしばいらっしゃいます。例えば、トップページが縦長になるのを恐れるあまり、簡単なコンテンツ一覧(「はじめに」「小説」「イラスト」など)に留めて必要な情報まで省略し、「小説」のリンク先に詳細な一覧(「長編」「短編」とか具体的な作品名とか)と必要な情報(小説の分量や内容紹介など)を用意したり……。

 しかしページのダウンロードとスクロールとを比較すれば、前者の方がストレスを与えると僕は思います。詳しくは後述しますが、スクロールを避けてページを増やしたために、開いても開いても目的の小説にアクセスできないことがあります(煩雑なアクセス手順)。これでは、せっかくの小説に至るまでに読者が挫けてしまうこともありますし、再読する気が失せる可能性も高いと思います。なぜなら「めんどくさい!」からです。再読するために、毎回四ページも五ページも開かされることを想像して下さい。ぞっとします。

 ですからスクロールは何が何でも忌避するべき要素ではないと僕は思います。そこで、スクロールのストレスを軽減するためにひと工夫します。

 工夫は実に簡単で、スクロールのストレスは「検索容易性の低さ」(=わかりにくさ)に起因しますから、情報検索を助けるような工夫をすればよいことになります。

 情報検索を補助する手段とは、もちろん「リンク」です。ページ内にリンクをはるわけですから、「ブックマーク」になります。タグは「<a name="**"></a>」で、「**」に任意の名前を付けて適切な位置に挿入します。「<a href="#**">(リンク表記)</a>」でリンクをはれます。

 そしてこのリンクをページ上端、少なくともブラウザの表示画面内に収まる位置(解像度800*600基準)に並べます。リンクを下端に並べるのは、いちいちスクロールさせる必要性が生じるのでおすすめできません。表示画面内に一見してリンクとわかるデザインで並べることをおすすめします。

 逆に、縦長のページを利用して、ダウンロードのストレスと煩雑なアクセス手順に起因するストレスを軽減することができます。

 忌避されがちな縦長ページでも、必要な情報を優先的に表示するよう工夫しておけば、ユーザーがその情報を閲覧している間に順次情報をブラウザが先読みしてますから、適切なリンクさえはれば、ファイルを先読みさせるような効果があります。

 例えば、こちらをご覧下さい。→http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/5271/dark/top.htm(別窓で開きます)。

 ここでは、新着情報を表示している間にメインコンテンツのインデックスを読み込んでいます。リンクをクリックすれば、同ページ内のインデックス部分に飛ぶようになっています。ちなみにリンク先にもページ内リンクを用意し、検索容易性を高めてあります。

 このように、縦長ページでもページ内リンクを駆使することで、スクロールのストレスを軽減し、ダウンロードのストレスや煩雑なアクセス手順のストレスも軽減できる、と僕は考えています。

 もちろん縦長過ぎれば、読み込みに時間がかかるので、ページ内リンクをクリックしてもリンク先に飛べないことがあります。このあたり、さじ加減が難しいところですね。

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■煩雑なアクセス手順を見直す
 小説を見るために煩雑なアクセス手順を要求する方が多くいらっしゃいます。例えば、

 □01トップページ→□02小説インデックス(長編/短編)→□03長編インデックス(作品名)→□04作品目次→□05小説本文

 少し極端な例ですが、小説までに四から五ページのダウンロードを要求するサイトをしばしば見ます(ごくまれに□04作品紹介→□05作品目次→□06小説本文という恐ろしいサイトもあります)。

 初訪であれば、こうした煩雑なアクセス手順もあまり気にならないでしょう。
 ストレスを与えるとすれば、こうした構造を採っているサイトでは、小説を読むかどうかを決める要素になる「内容紹介」(あらすじやジャンルなど)が(03)か(04)にあることが多いので、三か四ページもダウンロードした挙げ句、「読まない」と決めたときでしょう(ちなみに、読むかどうかを決める要素を小説本文以外に用意していない方がいらっしゃいますが、ちょっと不親切です。タイトルだけでは、恋愛小説なのか成人向け小説なのかはたまたミステリなのか、少しも判断できないからです。僕の印象では、恋愛小説を発表している方に多いようです)。

 こうした煩雑な手順は再訪したさいに大きなストレスになります。特に作品の再読のために再訪したさいには、(01)(02)(03)あたりは不必要なので、イライラしながらページをダウンロードすることになります。まして縦長でスクロールが必要などと云ったら最悪です。

 そこで、アクセス手順を見直します。

 例えば、小説ページに目次ページを用意している方が多くいらっしゃいます。しかし全二十話以上(つまり二十ページ以上)の大長編ならともかく、全三話程度では目次ページの必要性に疑問が生じます。ですから、手順の煩雑さと目次ページの必要性とをよく比較する必要があります。

 また一方で、目次ページを用意せず、ページ最下端に次ページへのリンクだけを用意している方も多くいらっしゃいますが、この場合にも煩雑なアクセス手順のストレスが生じます。例えば、作品を一気に読むならともかく、途中(四ページ目)から再読するさいには、□03長編インデックス→□04小説ページA→□05小説ページB→□06小説ページC→□07小説ページDと、七つもファイルをダウンロードする必要が出てきます。しかも小説ページに入ってからは、いちいちスクロールさせなければなりません(三回も!)。恐ろしい煩雑さです。

 そこで、全五話程度(五ファイル程度)の短編小説の場合は、小説ページの最上部に目次(もちろんリンク)を用意することをおすすめします。例えば、こちらをご覧下さい。→http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/5271/dark/fcsit/fcsit01.htm(別窓で開きます)。こうすれば、小説の分量を大まかに把握できるうえ、再読のさいのアクセスも簡便になります。

 というわけで、分量が少ないにも関わらず目次ページを用意している方、あるいは、小説ページに次ページへのリンクしか用意しておらず、そのうえ小説ページが三ページ以上ある方は、アクセス手順の再検討をおすすめします。

 そのほかアクセス手順の見直し点としては、(02)(03)(04)があります。この三つのファイルは統合できますし、実際に統合している方が多いようです。作品数が多いと、ページが縦長になる場合がありますが、その場合はページ内リンクを利用して検索容易性を高めれば大丈夫です。

 以上の二点を見直すだけで、四から五ページのダウンロードを要求していたところが、三ページで小説本文に到達できるようになります。さらに(01)と(02)(03)(04)を統合すれば、ワンクリックで小説ページに到達できます。ここまで簡便にすれば、とりあえず開いてみようと云う方が増えるでしょう。小説本文を開いてもらえたら、後は内容(特に冒頭の数行)で勝負です!

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■「二重トップ」ってどうなの?
 俗に「二重トップ」と呼ばれる二段構えのトップページがあります。多くの場合、一枚目に「イメージ画像とサイト名」、二枚目に「コンテンツ一覧とサイト案内」という構成になっています。僕はこの一枚目のページを「トップページ」、ナビゲータとして機能する二枚目のページを「ホームページ」と呼んでいます。サイト内徘徊の起点なる場所こそ「家」(=Home)だと考えるからです。中には、一枚目に普通のトップページ、二枚目に詳細なサイトマップという中途半端な構成の場合もありますが、この場合はどちらが「ホーム」なのか判断に苦しみます。

 この「二重トップ」に関してですが、上のような考え方から、煩雑なアクセス手順の原因となるので、僕は否定的に見ています(まして「必ずトップページにブックマークして下さい」などと書いてあると、「絶対にブックマークなどしない!」と意固地になったり、わざわざ二枚目にブックマークしたりします。このあたり子供ですね(^^))。また掲示板などの反応を見ると、否定的見解の方が目立っているように思います。

 企業サイトの多くで、二重トップを採用しているところをよく見かけました。「トップページ」は書籍で云えば、表紙に当たるそうです。書籍の表紙が本の内容をイメージさせる機能を持つのと同じく、「トップページ」も、サイト(引いては企業)のイメージを伝える機能を果たしているそうです。

 例えば、ナビゲータとして十全に機能するべきホームページが、良いイメージを伝えるために過剰にビジュアル化されていたと仮定します。そうすると、このホームページはナビゲータとしては機能しにくくなります。重いからです。またデザイン性を高めれば、その分ユーザビリティを放棄しなくてはならなくなります。

 かといって、画像を放棄してテキスト主体のインタフェースにすれば、ナビゲータとしては及第点を獲得しても、企業イメージを伝える役目は果たせませんし、かえって悪印象を与える可能性もありそうです(実際はテキスト主体のインターフェースの方が良い印象を与える、との実験結果が出ています)。

 このように一ページでは機能の両立が難しいので、「トップページ」に企業イメージを印象づける役割を、「ホームページ」にナビゲータとしての役割を分担させているようです。ただし接続環境の改善を受けてか、画像をふんだんに使って「トップページ」と「ホームページ」両方の機能を両立させたトップページが最近は多い印象を受けます(そんなにネットサーフィンをしているわけではありませんが)。

 注意すべきなのは、トップページが有効なのは新規訪問者に対してだけという点です。リピーターとしてそのサイトに再訪するようになれば、もはや充分に企業イメージを持っているわけですから、トップページは不必要になります。

 というわけで、重要な点は二点。

  1. トップページはビジュアル的にサイトのイメージを伝えたいときに有効。
  2. リピーターにとってトップページは必要ない。

 ですから、もし二重トップを採用するのであれば、デザイン性とユーザビリティとの妥協の産物のような中途半端なものにするのではなく、トップページは徹底的にデザイン性の高さを追求し、ホームページはユーザビリティの高さを追求したものにした方が良いでしょう。中途半端な「二重トップ」はユーザーを困惑させるだけだと思います。

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