皆さんはどのような方式で各ページをリンクさせていますか? 意外と何も考えずにリンクさせがちですね。少なくとも僕はそうでした。新しいページを作ると、何とはなしにリンクさせてきました。方式はだいたい「階層型」と呼ばれるもので、小説ページは加えて「リニア型」も採用していました。 ここで「階層型」とか「リニア型」と云っていますが、これらはリンク方式の名前で、大きく分けて次の三種類あるそうです。
ここでは、読まれやすいリンク方式=読者に親切なリンク方式を考えてみたいと思います。 |
「リニア型」は極めて単純なリンク方式で、本文を読ませたい順番にリンクさせる方式です。図示すると、次のとおり(【p*】はページを表しています)。 【p1】←→【p2】←→【p3】←→【p4】←→【p5】←→…… このリンク方式の特長は、読者がまったく迷わない(予測可能性)という点です。リンクが一箇所で、しかも次に読むべき情報にしか飛びませんから、サイト内で迷子になる恐れがまったくありません。 僕の経験上、小説ページの多くでこのリンク方式がとられていますね。リンク表記はだいたい「Next」(「次へ」)「Back」(「戻る」)になっていることが多いです。 しかし「リニア型」は「読者が迷わない」というナビゲータとして得難い長所を持つ反面、次のような短所もあります。 それは、トップページから【p3】【p4】といった中途ページへのアクセスが困難という点です。 小説ページの場合、一気に読了しなければ、再訪して続きを読むことになります。そのさい、前回の続きにアクセスするためには、また【p1】からダウンロードを開始しなければなりません。 接続環境にもよりますが、一般的にページのダウンロードは訪問者にストレスを与えますから、できれば避けたいところです。読者がダウンロードの手間を避けて、小説の続きを読まないかもしれません。「面白くないから読まない」ならまだ諦めもつきますが、「ダウンロードがめんどくさいから読まない」なら、これは実に残念です。 というわけで、リンク方式として「リニア型」だけを採用するのは、読者に対してやや不親切ですから、できれば避けるべきでしょう。後に紹介する「階層型」との併用が好ましいと思います。 |
「グリッド型」は「リニア型」の発展型になります。「リニア型」を二重三重に組み合わせた形になります。 図示すると、下のとおり。
縦軸・横軸にそれぞれ関係する情報をリンクさせます。例えば、小説系サイトであれば、【p1】→【p2】→……の横軸に各作品のタイトル、【p1】→【p1'】→……の縦軸に作品の本文をリンクさせる形になるかと思います。 ただしナビゲーションの効率はあまりよくありません。【p1】をスタートページだと仮定すると、【p5】のタイトルを見るまでに四ページ分、【p5"】に至るまでに六ページ分もダウンロードする必要があります。これでは、効率よく作品のラインアップを開示することができませんし、数回に分けて読書する場合、極めて使い勝手が悪くなります。 「グリッド型」は製品紹介サイトなどで、目的の製品を検索するさいには実に効果的です。例えば、横軸にプリンタ・スキャナといった製品カテゴリ、縦軸に各製品を並べると、迷うことなく目的の製品を探し出すことができます。 しかし小説系サイトの場合、具体的な目的があって訪れる人は少数派と予想されますから、このリンク方式はあまりおすすめできません。 |
最後に「階層型」を紹介します。 「階層型」は、ほとんどのホームページで採用されているリンク方式で、インデックスとなるトップページを中心としてツリー状にページをリンクさせた形です。図示すると、次のとおり。
「階層型」の長所は情報(リンク先)を一括して提示できるところにあります。「ドンキホーテ」(僕は行ったことはないですが)の圧縮ディスプレイのようなもので、コンテンツの豊富さをアピールすることもできますし、発表中の作品をすべて提示することで、訪問者に多彩な選択肢を提示することもできます(提示される選択肢が多ければ、その中に訪問者が気になるタイトルが含まれる可能性は高くなります)。 ただし「リニア型」にあった「予測可能性」は失われます。よほどリンク表記(予測可能性を有するリンク表記。詳しくは「理想のリンク表記」を見てみて下さい)に気をつけないと、いたずらに訪問者を迷子にさせてしまいます。またコンテンツの幅が広がるにつれ、整然とした構造にするため、階層が深くなっていく傾向があります。深い階層型は迷子になる可能性を高めるうえ、階層下部のページへのアクセスが困難になりますから、これは大きな短所になってしまいます。 そのほかコンテンツを必要以上に提示することで、そのサイトのメインコンテンツがぼやけてしまうという短所もあります。例えば、前バージョンの「鉄琴銅剣楼」では、「ネット小説研究室」のほか、自作小説、中国思想紹介、受験勉強支援など、すべてのコンテンツを提示していたため、訪問者はこのサイトのメインコンテンツがわからない、という事態を引き起こしていました。 サイト管理人(デザイナ)側はすべてのコンテンツを提示したくなるものですが、訪問者はすべての情報を一度に見る必要はありません。余計な情報はかえって訪問者の混乱を招きます。ここが工夫のしどころですね。 |
ここでは小説ページのリンク方式についてだけ考えてみます。 皆さんはオンラインで小説を読む場合、どのようにリンクを辿るでしょうか? 僕の場合、まずインデックスから小説のトップページ(多くは序章や第一章)を開き、読了後、次ページへのリンク(多くは「次へ」「Next」)があれば、それを辿ります。ですから僕にとっては「リニア型」の方が便利に感じます。「リニア型」リンクを小説ページで採用しているサイトは多いので(鍵屋さんの奇譚双紙や銀凰さんの賑町笑劇場などがそうですね)、不便と感じたことはありません。 また1ページ読了ごとにバックキーでインデックスに戻り、次ページを開く方もいらっしゃるようです(これはメールで竹原さんに教えていただきました)。これは小説ページが「階層型」のリンクを採用していないと使えない方法ですね。バックキーに履歴をためず、サイト内を効率よく散策するのに適した賢いリンクの辿り方なので、使っている方は多いと思いますが、「階層型」リンクを小説ページに採用しているサイトは、「リニア型」に比べて若干少ないという印象を僕は持っています。 さて上で指摘したように、読者がリンクを辿る方法には、次ページへのリンクを直接辿る「リニア型」と、いったんバックキーでインデックスページに戻る「階層型」とがあります。ですから、できれば、両方のリンク方式を併用した方がよいと思います(実際、両方を採用しているページが大部分ですから、僕に云われるまでもないかも知れません)。 小説ページが「リニア型」だけを採用していた場合、読者は迷子になることはありません(例えば、ページを飛ばしたり次ページを見つけられなかったり……)。これは大きな長所ですが、しかし作品の分量(主観的な分量。どれくらいで読了できるかという目安)が一見して把握できないという短所があります。どのくらいの時間で読了できるのか予測できないと、個人に与えられた時間との兼ね合いが計算できないので、その作品が忌避される可能性は高くなります。十分で読めるのか、それとも読むのに一時間かかるのか。この目安がわからないと、就寝までの限られた時間の中でその作品を読む勇気はなかなか沸かないはずです。 また接続時間を節約するため、右クリックメニューの「新しいウィンドウで開く」を利用し、小説ページを一気にすべて開いてしまうという方もいます。この場合、「リニア式」では次ページへのリンクが表示されるまで待たなくてはなりません。しかもそのリンクはページ最下部に位置するのです。これは大きなストレスにつながる恐れがあります。ですから、「リニア型」単独の採用はやや読者に対して不親切と云えるでしょう。 次に小説ページが「階層型」だけを採用していた場合を考えてみましょう。この場合、小説の分量が一見して把握できるうえ、再訪して続きを読むさいアクセスが簡単ですから、非常に便利です。しかし「リニア型」とは異なり、次ページへ移動するさいに2クリック(バックキーと次ページへのリンク)必要になります。1クリックで済む「リニア型」のナビゲーションに馴れた読者は、「手間がかかる」という印象を持つでしょう。 このように、「リニア型」「階層型」ともに長所と短所をそれぞれ持っています。ですから、「リニア型」と「階層型」の併用が好ましいと思います。 |
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